「ITエンジニアの求人を募集してもうまく採用できない」とお悩みの人事担当者(採用担当者)は少なくないのではないでしょうか?ITエンジニアの採用を成功させるためには、労働市場におけるITエンジニアの雇用状況を把握したうえで、彼らの転職意識を理解し、対策を練る必要があります。
そこで人材会社で転職領域の仕事を15年間経験してきた私から、悩める採用担当者へITエンジニア採用のポイントをご紹介します。
現状把握
まずは労働市場全体の動向について、政府統計などから現状把握を行います。厚生労働省が毎月公表する一般職業紹介状況によれば、令和元年10月現在の職業別有効求人倍率(パートタイムを除く常用)は、情報処理・通信技術者(ITエンジニア)が2.41倍で、職種全体(1.43倍)よりも0.98ポイントも高い水準になっています。
- ITエンジニア2.41倍
- 職種全体1.43倍
有効求人倍率は、求職者1人当たりに企業から何件の求人があったかを示す指標。情報処理・通信技術者(ITエンジニア)1人が2件以上の求人から仕事を選択できる計算となり、企業側からすると人手不足感が根強く、採用するには難しい職種であることが分かります。
採用の難しいITエンジニアの中途入社を成功させるために、まずはITエンジニアの転職意向の実態を見ていくことにします。
ITエンジニアが転職先を決めるポイント
キャリア採用ラボが公表したITエンジニアの転職意識調査(平成27年8月実施)では、ITエンジニアが転職先を決めるポイントは、「残業・休日が適正に取れて生活にゆとりができる」が42.2%で最も高く、次いで「会社に将来性、安定性がある」が34.2%で続く結果で、ともに“環境や制度”の項目が上位にランクインしています。
一方で“仕事内容”に関わる項目の順位を見てみると「新しいキャリア・スキルを身につけることができる」が19.2%で5番目の順位にようやくランクインしているものの、その割合は1位の半分以下の数値です。
1位.残業・休日が適正に取れて生活にゆとりができる | 42.2% |
2位.会社に将来性、安定性がある | 34.2% |
3位.希望の勤務地である | 27.6% |
4位.転勤が無い(少ない) | 23.2% |
5位.新しいキャリア・スキルを身につけることができる | 19.2% |
この結果から、ITエンジニアは転職先の選定に“仕事内容”よりも“職場環境・プライベート”の充実を優先する傾向があると推察されます。
ITエンジニアが詳しく知りたくなる求人情報
さらにキャリア採用ラボの同調査で、ITエンジニアが詳しく知りたくなる求人情報を聞いたところ、「モデル給与・平均給与・評価制度など」が43.4%で最も高く、次いで「平均残業時間・残業手当など」が41.8%で続く結果となっています。
1位.モデル給与、平均給与、評価制度など | 43.4% |
2位.平均残業時間、残業手当など | 41.8% |
3位.社内の雰囲気や人間関係 | 30.6% |
4位.休日休暇制度(有給日数など) | 30.2% |
5位.福利厚生制度の詳細 | 28.2% |
ここでも具体的な“仕事内容”の項目よりは、“制度や環境”の項目が上位にランクインする結果となりました。
以上の結果から、ITエンジニアを採用するための具体的な対策を検討していきましょう。
対策1:給与・評価制度の再設定
ITエンジニアを採用するうえで検討すべきことは、彼らが希望する給与額を把握し、充分に尊重することです。
そのためには、面接時にしっかり待遇面について話し合う必要があります。
さらに、評価制度を詳しく伝えることも特に重要になってきます。
というのも、ITエンジニアの業務は必ずしも成果が可視化される仕事ばかりではなく、裏方・サポート業務に費やす時間が少なくありません。
その為、ITエンジニアは「技術者を軽視しない環境」を求める傾向があります。
だからこそ、具体的な評価基準を提示してくれる企業に「自分(ITエンジニア)の働き方をきちんと理解・尊重してくれそうだ」と惹かれるのです。
対策2:業務効率化・残業の最適化
勤務体系、特に残業時間の適正化はITエンジニア獲得のために重要なポイントとなります。
普段から残業時間が多いケースでは、仕事の手法を見直して、無駄な時間を削減するような業務改善が必要でしょう。
ITエンジニアは、顧客から受注したシステムを常時安定稼動しなければならないため、突発的なシステムエラーの対応に追われるケースが多々あり、どうしても労働時間が不規則・長期化しがちです。
だからこそ彼らにとっては、仕事量や労働時間を是正・改善して「働きやすさ」を追求している企業は魅力的なのです。
また、残業をしなければならないケースでも、サービス残業になる事態は絶対に避けて、働いた時間分をきっちりと報酬・評価で応える体制でなければなりません。
対策3:待ちではなく攻めの姿勢で企業の魅力をきちんと伝える
企業の魅力を細部まできちんと余すことなく伝えなければなりません。
特に意識すべきは待ちの姿勢ではなく、企業側からITエンジニアへ魅力を積極的に発信していく必要があります。
『対策1』や『対策2』を実践できていたとしても、それら制度や環境に関する魅力をきちんと求人原稿で求職者に伝えなければなりません。
通常は“仕事の内容”や“応募条件”など「このような人材を求めている」という情報を求人原稿に記載することばかりに注力しがちですが、これまでにお伝えしてきたように、ITエンジニアが知りたいことは“評価”や“制度”など「企業がどの程度、ITエンジニアである自分のことを気にしてくれるのか」です。
これは特別な取り組みではなくても構いません。
例えば社内のITエンジニアに「自社の魅力は?」をヒアリングするなどして、そこで得た情報を惜しまず求人原稿に記載しましょう。
このように、企業がITエンジニアを選ぶのではなく、ITエンジニアに企業が選ばれる立場だという意識で採用活動に取り組む姿勢が重要になってきます。
この記事のまとめ
ITエンジニアの採用は難しいため、仕事内容の改善と同時に職場環境の向上が求められています。給与・評価制度を再確認し、残業が多い場合には業務効率化に全社員で取り組みましょう。相手に求める前に、自分たちの足元をきちんと固めてから、自社の魅力を適切に伝えていきましょう。
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